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なぜ書くのか。それは、人に言葉があり、私に心があるから。

2017

0823
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2006

0825

横山秀夫の「半落ち」を読んだ。やっぱり世間で評判になっていた作品だけあって、面白かった。何人もの人間の視点を飛び移りながらの進行は「壬生義士伝」を思い出させたが、刑事・検事・新聞記者・弁護士・裁判官・刑務官の順に、容疑者の梶総一郎と物語がたどるプロセスが進んで行くのは絶妙だった。

中でも私が特に感じ入ったのは中盤、新聞記者の中尾洋平の章だ。どの人物も、どこかしらで人生に失敗してスネに傷持っていて、今の職場での上下関係のせいで思い通りにいかないもどかしさを感じている。この小説の大きな焦点の一つは、”組織の窮屈さ”であるようだ。ちょっと社会人になった時のことが思いやられる。

中尾洋平という記者は、警察が秘密に調べていた事件を書いて暴いたので、刑事たちににらまれている。その上、偶然立ち聞きした特大スクープを強引に聞きに行ったため、地検にもしばらく出入り禁止になった。その間に地検の発表を聞けず、他の新聞が全部書いているのに自社だけ知らなかったという「特オチ」を食らい、自分は新規採用の上司に「だから中途採用のやつはダメなんだ」と罵倒される。

その中尾が県警で立ち聞きしたネタはどこの社も知らないものだったが、それを記事にすると影響が大き過ぎる上に、何より容疑者である梶総一郎の決死の覚悟を踏みつけにするものだった。県警は別の特ネタを提供し、梶のために書かないでくれと言う。中尾はそれに応じるが、上司にパソコンの予定稿を勝手に読まれ、梶事件について書けと命じられる。「書けません」という中尾に、「本社が社会面のトップを空けて待ってるんだぞ。会社にい続けたかったら書け。」と命じる上司。中尾は結局、送信のボタンを押してしまうのだった。

新聞記者ってこんなに大変なんだ…と実感させられた場面。お互いにスクープが取れなくてなぐさめ合った今日の友は、特ネタを載せてこちらを見下した顔をする明日の敵になる。特オチをした日に休憩所で他社の記者たちから嘲笑され、誰がどうなろうとこのスクープを書いてやると決意する中尾の姿は哀れだ。そこではまさにあらゆる方面との情報戦が行われているが、終わりのない戦いほど人を疲れさせるものはない。フィクションながら、現実的すぎるほど現実的な小説だった。

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