2006
物理151のクラスは理系専攻者の必修クラスなので、150人ぐらい学生がいる。…はずなんだけどね、名簿の上では。でも実際はその10分の一ぐらいしか来ていない。それがよくわかるのは、試験の時にだけ人が急増して教室が満員になるから。まあ、誰しも経験があるとは思うけど。
理由としては、朝8時からなのと、先生がレクチャー内容をネットに載せるからと、先生の喋り方が聞き取りにくいからだと思う。しかもすぐに話がそれる。ピサの斜塔から羽と鉄球を落として重力が等しく作用することを証明した実験の話をしているかと思うと、いつの間にか飛び降りの話になり、挙句には「自殺はだめだ。命は大事にしろ」と言っていたりする。あるいは、ガレリオの発見した法則の話から、彼の生涯の話になって、気づいたら「これから世界はグローバリズムの時代だ」と話してたりする。物理の話はどこへ?
セージブラッシュの知り合いに金髪を背中まで伸ばしている男がいて、もうちょっと背中がごつくなかったら完璧に後姿は女に見えるような人がいる。その彼が「あの先生のクラスは最低だ。マジで行く必要なんかない。だからあんな大きい教室にいつも12人しか生徒がいないんだ」と言っていた。翌朝その授業に行くと、なんと彼が座っている。「来ないんじゃなかったの?」と苦笑して聞くと、彼は「僕がその12人のうちの1人なのさ」と言って肩をすくめた。
この背景、本文の欄が授業のノートみたいでちょっとかわいい。
2006
平和な時には女の子が多く生まれるっていう話を聞いたことがあったけど、この前の哺乳類学のクラスで、あれにはちゃんと裏付けがあったことが判明。
それは、ライオンの話だった。
ライオンは一夫多妻制。オスは、競争に勝った1匹がたくさんの子孫を残せるが、残りの負けたオスは子孫を残せない。メスは、それぞれ均等に子供を産む機会がある。そして、子供が強くなるかどうかは、母親の健康状態に大きくよる。
そこで、受精の時点で母親の健康状態があんまり良くなかったら子供はメスになって、良かったらオスになるという。なぜなら、弱いオスは子孫を残せないが、弱いメスにも子供を生む機会はあるから。そして強いオスが生まれれば、強いメスよりもたくさんの子孫を残せる可能性があるから。
そこらへんの摂理が人間にも残っている…のかも。
2006
Hamlet:
So tell him, with th'occurrents more and less
Which have solicited―the rest is silence.
Hamlet dies.
Horatio:
Now cracks a noble heart. Good night, sweet prince,
And flights of angels sing thee to thy rest.
ハムレット:
お前は生きて、全ての一部始終を皆に伝えてくれ。
では頼んだぞ…。ああ、後に残るは、静寂ばかり…。
ホレイショー:
ああ、ついに死んでしまわれた。
おやすみなさい、高貴なる王子よ。
天使が貴方のために舞い、歌わんことを。
ウィリアム・シェイクスピア 『ハムレット』 第五幕 第二場
この時代がかった台詞、芝居がかった場面。すべての主だった登場人物は死に絶え、自分の命さえも注ぎ込んで、ハムレットは復讐を遂げる。
ハムレットの「―the rest is silence.」の台詞に、涙を流さんばかりに感情移入をさせてしまうあたり、シェイクスピアはやっぱりすごいと思う。
しかし、私の頭の中はまだハムレットの「To be, or not to be, that is the question;」で一杯だったのに、今日のクラスではいつの間にか『リア王』の第一幕に移っていた。あれれ。
2006
物理の文章問題では、いつも現実にあるものを使う。しかし、微妙に変だ。
100メートルのビルから角度45度で飛び降りるスーパーマン(普通の人間じゃまずい)は、秒速何メートルで何メートル先に着地するか。
摩擦係数0.2の凍った路面を重量1000kgの車(たぶん誰も乗っていない)は、どれぐらいの速さで滑っていくか。
秒速40メートルでホースの筒先から仰角30度で飛び出した水流は、50メートル先のビルのどこにあたるか、などなど。そんな悠長に計算して放水している消防士さんはいないって。
そして、重力加速度を計算する問題。
エレベーターの中で魚を量っている人がいる。魚は4kgで、エレベーターは秒速2メートルの加速をする。魚の重さは、エレベーターが上がっているなら”重さ×(加速度+重力加速度)”で、エレベーターが下がっているなら”重さ×(加速度-重力加速度)”で、4kg × (2m/s2 ± 9.8m/s2)となる。そこまではいい。
三問目:もしエレベーターのワイヤーが切れてしまった時、魚の重さはいくらか?
答え:4kg × (-9.8m/s2 + 9.8m/s2) = 0kg
なんと、魚は無重力になる!
しかしよく考えると、無重力だーなんて喜んでいられるのは数秒間で、ワイヤーの切れたエレベーターの行き先なんて言うに及ばない。つくづく例題に登場する人のことを考えていない例題だ。
2006
先週は生物のフィールドトリップで、ナイティンゲール・サイトというリノ市から100Km以上離れた荒野に3回ほど行って来た。10m間隔で120個のトラップを仕掛け、そこにどんな小動物が捕まっているかを調査するというもの。罠を仕掛けるのは午後なのだが、動物を調べに行くのは早朝6時の出発であった。(昼だとトラップの中で動物が暑くて死んでしまうから。)オプショナルだった朝の調査に、好きこのんで2回も行ったけどね。
捕まえるのは砂漠に住むリス・ネズミ類で、カンガルーラットやポケットマウスなど、どれもネバダのような砂漠の荒野にしかいない種だ。彼らをトラップの箱からつまみ出し、足の指の数、歯の形、性別、重さなどを調べて、耳に識別票を付けてから放す。トラップの中のエサというごちそうと、手やら口やら股間やらをひんむかれてじろじろ見られるのは、どっちが割に合うのかわからない。
毎回、教授やTAの運転するバンに皆で乗って行く。ある時、私は女性のTAが運転するバンの助手席に乗っていたのだが、彼女が「オウ!」と叫ぶなり突如車を横の土手に乗り上げた。そして車から飛び降りるなり、脇の荒野へとまっしぐらに駆け出す。何がなんだかワケがわからないながら、私たちもつられて車から飛び出して走り出す。まるで事件現場に到着した警察官のよーな慌しさだ。ちくちく刺さる低木の枝も構わず走ってTAに追いつくと、彼女は「あーあ、逃しちゃったわ」とため息をついている。どうやら、珍しいヘビがいたらしい。生物のTAって本当に生き物が好きなのネ…と息を切らしながら思った。
2006
今学期の趣味クラスは、ずばりシェイクスピアだ。このクラスは「喜劇と恋愛」と「歴史と悲劇」の二つに分かれていて、私が取っているのは後の方だ。学期で6作のシェイクスピアを読むが、手始めは「ロミオとジュリエット」だった。恋愛でもあるが、確かに悲劇でもある。
このクラスを取った理由は、もともと歴史的有名人の著作を読むのが好きで、シェイクスピアはその中でも大御所だから。もう一つの個人的な理由としては、「からくりサーカス」という漫画に出て来るギイが好きだから、シェイクスピアも好きになった。ギイというのがまたキザなフランス人で、戦いで死にそうな怪我をしていても、にやりと笑って「シェイクスピア曰く『この世は舞台なり。誰もがそこでは一役演じなければならぬ』」とうそぶいたりする。ギイがいつもそうやってシェイクスピアの言葉を引用していたのだ。
さて、1998年ぐらいに作られた現代版の「ロミオ&ジュリエット」の映画があり、原作を読み通した後にそれを観た。馬鹿馬鹿しいほど現代化された舞台、でも台詞はすべてシェイクスピアの言葉のまま、というのが面白い。それを観てあらためて思ったが、ロミジュリとはとことん間の悪い場面が多い。まあ、間の悪い場面が重なってあの悲劇になったわけだが。
ローレンス神父がジュリエットに24時間仮死になる薬を与え、それを街から追放されたロミオに伝えようと手紙を出すのに、ロミオは郵便員とすれ違ってそれを受け取らない。あそこで受け取っていれば~!!
そのせいで仮死である事を知らず、死んでいるジュリエットを見て絶望し、毒を飲んで後を追おうとするロミオ。ロミオが上を仰いで「今行くよ…」と言っている間に、ジュリエットは目を覚ましてロミオに手を伸ばす。しかしその手が届く頃には、ロミオは猛毒を飲んでしまった後だった。
そこで気付けよロミオーっ!!上を仰いで浸ってる場合じゃないよ!ほら、ジュリエット生きてるよ!!だーっ馬鹿ーっ!!
あー、こういう間の悪いのってすごく苦手です。観ていて勝手に悶えそうに苦しかったです。でもこうしなければ、ロミジュリはロミジュリにならず、シェイクスピアはシェイクスピアにならないんだろうな。
2006
私の大きらいな物理の授業を、卒業のためにはもうこれ以上履修を先延ばしに出来なくて、今学期しぶしぶ取っている。それにはラボがあって、昨日その一回目のラボに行ってきた。
ラボは2人一組になり、実験をする。そのレポートは、個人で出してもいいし、2人で出してもいいと言われた。別に知り合いでもない人と組んでいるわけだから、一緒に出すとなると、わざわざ集まったりしないといけなくて面倒だ。なので、「別々に出すのでいいよね?」と私は相手に聞いた。
そしたら彼女はこう言った(と思われる)。
「ええ、それでいいと思うわ。だってこういうのって、2人でやっても別々にやるのと同じくらいの手間がかかるんですものね。ええ、本当にそれでいいと思うわ。一緒に出すと、2人でその成績をシェアするんでしょ?私、自分だけでやっても十分いい成績を取れますから。」
同意してくれるのはうれしいんだけど、最後の一言はちょっと多かったんじゃないかな…。
2006
「ストレスは人生のスパイス」なんて笑うせぇるうまんが言っていたけど、避けては通れぬとはいえ、やっぱりストレスは少ない方がいい。今回もう一つ趣味で取っているのは、Psychology 441;Abnormal Psychologyである。異常心理学、または精神病学と訳すべきだろうか。
Abnormal Psychologyのクラスでは、要は拒食症や分裂病や鬱病などのあらゆる精神病を扱っているのだが、そこから多くのものを学んだ。まず、精神病の特徴は”Out of control”、本人には症状がコントロールできない事で、そこへ「なんでお前はこんなに弱いんだ、もっとしっかりしろ」と言った所で害にしかならない。本人だってそこから脱け出したいのにできないから苦しんでいるのであって、その事への理解となると、やはりアメリカの方が「何事も根性だ」みたいな精神風土のある日本より進んでいると感じた。
精神病といっても、それは決して甘えや怠けから来るものではなく、たとえば悪くなったものを食べてお腹を壊すように、自分のキャパシティ以上のストレスによって脳がブレイクダウンし、それによって身体に症状を現れるって事なんだと学び、とても新鮮だった。それだったら、生きるのに張り切りすぎて自分でもどうしようもないうちにストレスをためて、精神病の症状を呈するまでになるよりは、無様でもいいから自分が楽なように生きるべきではないかと思った。
それに先生曰く、人生や物事に対して「こうあるべきだ、こうじゃなきゃいけない」という観念を強く持つことからして、精神的には不健康であるらしい。私はそういう観念を強く持つ傾向にあって、「なるようになるさ」なんて口では言っていても心では思えていなくて、「なんでこうならないんだ」という事にこだわりがちなので、自分の心のあり方にもっと気を付けようと思った。人生ほどほどでいいのよ、とは自身も精神病を乗り越えてきた先生の言である。
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